あるバイト

 

皆さん

アルバイトの経験はあるでしょうか?

あるばいと…って何?

と、言うブルジョワな方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そんな俺は例にも漏れずアルバイトをしていました。

それは片田舎にある温泉街の小さなバーでした。

片田舎の小さなバーと言えど服装は…

そう、バーテンダーと言ったら?でお馴染みのあの格好です。

白シャツ、ベスト、ネクタイ的なあれです。

余談ですがネクタイは気分や日によっては細めのものやループタイ、蝶ネクタイ、あるいはネクタイ無しで行っていました。

きっかけは後輩の紹介で最初は週1か2日くらいのヘルプで入ってもらう感じで~の話だったのですが、気付いたら

社員さんですか?

くらいの勢いで入ってました。

そんな感じでやってたもんで、1人でお店を回すことも少なくありませんでした。

その日、お店を1人で回す日でいつもの様に開店前作業を終え、オープンさせました。

させたはいいものの

…全くお客さんが来ねぇ。

その時期は1年においても閑散期で温泉街自体に人があまり来ていない時なのでした。

ヒマだぁー。よし、大掃除しよ!

思い立ったら吉日。

ガスコンロ、排水管、床、電球、椅子の足…

普段は念入りにやらない所までピッカピカにしてやろう。明日バイトに入るやつをビビらせてやるくらいに!

ちなみにシフト表を確認すると明日も明後日も俺1人でした。

業務用の洗剤などを使い掃除をし始める。

キレイになっていくのをみるとテンションが上がってくる。それに拍車をかけるようにお店に流れる有線を普段かかっているジャス的なオシャンなやつからJ‐popの懐メロ特集的なやつにチャンネルに合わせる。

更に上がるテンションと掃除のペース。

その果てに鼻歌を歌い始める始末。

丁度そこにSPEEDのMy Graduationが掛かる。

嗚呼、昔の曲は何故歌えるのだろう?

その質問の答えはわからないが、鼻歌から熱唱に変わるには時間が掛からなかった。

My Graduationを歌い上げカウンターをアルコール除菌用のスプレーをし拭き上げながらネクストミュージックがかかるのを待っていた。

♫〜
 
 

前奏が流れる。

波乗りジョニー。
 
 

除菌スプレーをマイクに桑田佳祐のモノマネを織り交ぜながら歌い始め

そしてサビに差し掛かる頃
 

 
 
…せん、

 
…ません。
 
 
 

すいません!!
 

後ろから声がしたのです。
 
振り返ると1人の女性が立っていました。
 

そう、桑田佳祐の後ろにお客さんが来ていたのでした。
 

 
(は?え?お客さん…お客さんやあわわわわあああ死ねる死ねる死ねる…きききき聞かれたのか?聞かれてしまったのかあああああ???!!!)
 
 

「おおおおお好きな席へどうぞぉう!!!」
 
 

うわずる声に静々と座るお客さん。
 

 
「な、なななにをのののまれますかぃ?」
 
 

恥ずかしい。もう只々死にたい。

なんなら笑いをこらえているように見えるお客さん。それに耐えきれずお客さんの飲み物のオーダーが口から発せられ前にこう言った…
 
 

「…きいてました…よね?」
 
 
 
 
 

 
 
沈黙が流れる。
 
 
 

 
 
 
 
 
———はい。
 

 
(はい、やっぱりねええええモノマネもしちゃってたしねえええあーあぁ聞かれてましたああああああーあー死ねる。もういいですよーだああああー)

 
———でも歌上手いですね笑

 
「は、はひッ、あり、ありがとござます」

愛想笑い、否、引きつり笑いをしながら答える。
 
 

———でもSPEEDは男性が歌うには高いですよねぇ笑
 
 
 

 
SPEEDから聞かれてたんかいッ!!
 
 
 

本日のお言葉

危機(ピンチ)には危険と機会(チャンス)が

含まれている。

詠み人知らず
 
 

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