昔話はお好きですか?
今回はそんなお話。
この前部屋を掃除していると大学の頃の写真が出てきた。
そこには一人の男が写っていた。
私が大学に合格し、実家を出ることになった。一人暮らしのために部屋も見つかり、さて明日は入学式だ。と言う晩のこと、急に不安になった。田舎の地元から離れて、しかも一人暮らし…はたしてやっていけるのだろうか。
そんな大学では友人も少なからずでき、大学生活にも慣れ不安も取り越し苦労になりつつある頃、北島(仮名)と言う男に出会った。
同じ学部で出来た友人にAというやつがいた。そのAの友人、それが北島だった。
北島は…そうだな、
足の短い小さいゴリラを想像してほしい。
想像できただろうか。
そう、それでいい。
それが北島である。
北島は学部は違うが、いつも私たちの学部のやつらと一緒にいた。むしろAといた。(ついてきてた。)
Aと話す時は北島もいたので自然と北島とも仲良く話すようになっていた。
そんな北島には色々なエピソードがあるのでいくつか紹介したい。
ep.1
北島は小さい頃から野球をやっていたらしい。
高校もその地方での強豪校に通っていて、野球部に所属していた。
ある日、Aと登校しているとAが
北島はその強豪校で4番を打っていた。
と言った。
あの小さな体格ですごいな。
なんて思っていたが、北島と同じ高校からきたやつに聞くと
「そうだったっけ?」
と、言ってた。
その後色々な風の噂により大学の前期が終わる頃には2軍での4番打者、と言うことになっていた。
真相はわからぬまま
そんなある日、北島の通っていた高校の文化祭があると言うことでAと私が誘われて行くことになった。(強引に)
着くやいなや先輩風を爆弾低気圧並みにビュンビュン吹かせる北島は誰彼かまわず挨拶しまくっていた。
ズンズン進んで行く北島は人ごみに消えて行った。
縁もゆかりもない高校の文化祭で取り残される私とA。
すると、先程爆弾低気圧に吹かれてた野球部の後輩くんらしき人がいたので聞いてみることにした。
北島って野球部でどんな感じやったん?
『応援の4番打者って言われてましたね。』
どう言うことかと聞くと
声はでかいし、お調子者だと言うことで野球部の応援団長(盛り上げ役)的なポジションと言うことだった。
野球選手としては、と詳しく聞くと2軍にたまに入るくらいだった。
僕らはその後そっとしておいた。
僕らなりの優しさだった。
ep.2
大学生はお金がない。
なのでアルバイトをする。
私もしていたし、北島もしていた。
北島は実家近くの某焼肉チェーン店でしていた。
いつも彼の財布にはその某焼肉チェーン店で使用できる割引券が入っていた。
財布を開く機会があるたびに
「この券あれば、2000円で腹一杯焼肉食えるでね。」
と、いつも自慢げにしていた。
「俺はいつでもこの券貰えるで、やるわ。いつでも来いよ。」
と言って割引券を貰っていたのだが、
いかんせんその場所が遠く焼肉を食べるために行く気にはならなかった。
そんなある時、Aが車を買った。
私もAもヒマだったのでドライブへ行くことにした。
行き先は北島のアルバイト先。
目的地に着くと、いつものお調子のヤツがいた。
「いらっしゃいま…お前らいったい何しにきたんやぁ!
帰れ!」
いつでも来いって言ったのは誰だよ。
そう言っている割には嬉しそうである。
そして適当に注文する私たち。
「お前らよう頼むなー」
なんて言われたが、こっちにはお前から貰った割引券があるからね。
途中、バイトの女の子が注文したものを置いて行き際に
「北島さんの大学の友達さんですか?いつもバイト中聞いてたんですけど、
あのー、そんな格好悪くないし、むしろ格好いいですね。」
と言った。
私たちはいつもどんな風に話されているんだろう。
そんなこんなでいっぱい食べてお会計に。
例の券を出す。レジの女の子が言う。
「12000円です。」
え?
顔を見合わせる私とA。
お金を払いレシートを見る。
あれはただのの3割引の券だったのだ。
そしてレジの店員さんにまたこの券を貰った。
誰でももらえるやつかい!
車で帰りながら
北島のことやから2000円で腹一杯は無いと思ってたから1人4000円は払わなあかんと思ってたけど6000円て!
食べ放題のが安くてお腹いっぱいくえるやんけ。
とツッコミ入れながら帰った。
まだ覚えてる11月くらいの出来事。
ep.3
北島は黒のワゴンRに乗っていた。
そんな私も車を買うことになった。
バイトして貯めたお金でどんな車を買おうか悩んでいた。
だが、そこは貧乏学生。
購入できる車の選択の幅もたかが知れている。
ありがたいことに色んな人のお力により、
値段の割に程度の良いマツダのデミオを手に入れることができた。
ちなみに色は白だったのだが
初めて私の車を見て尾松はこう言っていた。
「ええ車やん、でも白の車は汚れが目立つであかんわ。」
その数ヶ月後、北島が新車を買った。
日産のウィングロード。
色は白。
汚れ目立つんやなかったんかい。
これ見よがしに見せつけてくる北島。
私たち貧乏学生を前に
「ザクとは違うのだよ、ザクとは。」
まるで某機動戦士に出てるくるランバ・ラルのようであった。
数日後、ヨイショするのにも飽き始めた私たちは北島の車に乗っていた時にたまたまBと言う共通の友人と車ですれ違った。
よっ!
と、片手をあげるB。
こちらも軽く挨拶をする。
Bが乗っていたのはBMWだった。
すると誰も聞いていないのに
「…高級車は燃費が悪いであかんわ…。」
これには堪らず吹いた。
手元にある一枚の写真。
そこには北島が満面の笑みで写っている。
見栄っ張りで、何かにつけて地元の先輩をリスペクトしてて、
いつでもどこでも(室内も夜も)サングラスをかけてた北島。
元気でやっているだろうか。
そっと空を見上げる。
今度会った時は焼肉でも食べに行こうぜ。
俺は2000円しか持ってかないけどな。
本日の一言